REPORT「土佐の植物暦」山好き社員の散策レポート
「土佐の植物暦」
山好き社員の散策レポート
No.22
春は黄色い花から―。春まだ浅いある日、山で出会った知り合いにそう言われ、ハッとしました。「そういえば…」。2月からあちこちで撮ってきた写真をあらためて見直しました。
なるほど、ロウバイ、フクジュソウ、菜の花、タンポポ、ミモザ、トサミズキ。早春に目立っていたのは黄色の花たちです。冬枯れの山野に灯をともしたようでした。
透明感ある黄色
「土佐の植物暦」が紹介している早春の花でひときわ明るい黄色はトサミズキです。葉が生える前の枝に透明感のある淡い色合いが連なり、周囲も春めきます。早春の山で初めて出会ったときの光景が忘れられず、春が来るとまた会いに行きたくなります。
青空に映えるレモンイエロー
ミモザの黄色も印象的です。小さい花が密集し、木がレモンイエローに染められたように見えます。近所に大きな庭木があり、晴れた日には青空に黄色が映え、とても鮮やかです。
「土佐の植物暦」の掲載対象から外れる外来種ですが、高知の風土になじんだのでしょうか。立派な枝ぶりの木に毎年、見事に開花。見ていると、なぜか元気をもらえます。
虫たちを呼び寄せる
なぜ、早春には黄色い花が多いのでしょうか。もしかしたら、枯れ野で人の目を引くように、虫や鳥にも目立っているのかもしれません。花の色や芳香、蜜で虫を呼び寄せて受粉を促す。先月のレポートで紹介したフクジュソウがそうでした。
たちまち彩り豊かに
春分を過ぎ、里山にも一気に春が訪れました。シハイスミレ、タチツボスミレ、クサイチゴ、ツツジ。淡い紫、清々しい白、華やかな赤、たちまち彩り豊かになりました。
「土佐の植物暦」が紹介しているクサイチゴにはこんな解説があります。「花の中心の雌しべとそのまわりの雄しべの間に、ぐるりと一周する溝がある。この溝にたまった蜜を目当てにいろいろな昆虫がやって来て授粉する」。足もとの小さい花にこんな巧みな仕組みがあったとは…。驚きです。
自然の深遠さ
きっと太古の昔から花も虫たちも互いにつながり、それぞれのやり方で生命をつないできたのでしょうね。それぞれが共存し、どこかでつながっている。自然の深遠さを垣間見る思いがしました。
生き物のそんな生き方に思いをめぐらすと、有史以来、戦火が絶えない人の世界はなんと異質なことでしょうか。
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